声の深さ/声楽における発声レッスンの重要性について

元々教えを乞ういていた師匠の奥さんに発声レッスンを習いだして、おおよそ一年と半年になるのかなと思う。師匠の奥さんも声楽家でよく高校生のレッスンを見られている。名称を分けるために、師匠の奥さんのことは『先生』と表記している。この記事を読んでいて混ざりだしたと思ったら、この前置きをもう一度読見返してほしい。『師匠』と『先生』は別の人物だ。

ボイストレーニング

発声レッスンの内容は、50分の発声レッスンと曲練習としておおよそ10分ほどコンコーネを指導してもらえる。コンコーネというのは、ヤマハとかで売っている教則本のようなものだと思ってもらえればいい。ちなみに人名で、200年ほど前の人の教則本を練習している。

日本でいうところの、北辰一刀流。この教則本を最後までクリアしたらある程度の実力がつくカリキュラム本として有名なもの。高校生が受験のために最後までやり通すと聞くがにわかに信じがたい。めちゃめちゃ難しい。

コンコーネ

声の濁りを出す作業

僕の通っている発声レッスンは内容が決まっていて音質、声の出し方に問題があれば、歌うことを一旦やめて、姿勢を整え声を出し(やーとか言って響きのポイントを整地する)、もう一度同じフレーズを歌い始める、声の濁りを消し続ける作業である。

フレーズは複数あるものの、基本的な指摘内容は同じで声の膿だしを続ける。刀鍛冶が火で熱した刀をたたき続けるように繰り返し繰り返しのレッスンを週に一回のペースで行う。

声楽という楽器

先生のレッスンに通い続けていると、少しずつだけれども先生の思想、先生が声楽という楽器/ジャンルについて考えていることが僕にも浸透してくる。正しいか、正しくないかという二元論に押しはめるものではないが、僕は先生の考え方にはすごく共感している。小手先のテクニックとか、まずいらんのよ。

先生のレッスンでは発声のメカニズムについて、何度も注意を受ける。声は背中を通って、長い導線を経て、外に放たれる。体の外に出た声に何かを色を加えてはいけない。色とはエレキ楽器でいうところのエフェクターで、声にひずみとかワウをかけたらめちゃめちゃ怒られる。

支える部分は一か所だけで、あとはフリーの状態を保つ。抽象的で、客観的に読み返すと「は?」となる文言だが、自分の感覚としては「そうなんよ。」と読める。

エフェクトされていない深い声を出す、その一点のみ

発声のメカニズムを研究していくと、深い声というものを肌感覚で感じ取れるようになる。いい声を出すために、ブレスの仕方とか、立ち姿とか研究していたが、そんなことはほとんど無意味で深い声の研究にずっと集中すれば、呼吸は長くなり、息を吸う瞬発力はあがり、歌っている姿は雄々しくなる。

深い声=声の発声点からの距離×発音の輪郭×奥行

深い声は、ただ音量の大きい声というわけではなく、三次元的に聞こえるような声のことだと思っている。

響きがあるだけでは声は荒々しく、ギザギザとした印象を受けるだろう。耳で聞き、目で判断し、声は奥で鳴っているんじゃないかと考え、のどの奥で鳴らす(鎖骨と鎖骨の間あたりをイメージ)(二重顎ができるほど顎を引き、オペラ歌手をものまねしているような時)とそれは深いわけではなく、こもっている声になる。

全ての条件クリア以外は不正解

声の明るさも保たなければならない。発した言葉の輪郭がはっきり聞こえるということが声の明るさに直結すると考えている。けれども発声の輪郭を意識しすぎると、声の奥行と距離を失うようになる。すべての条件をクリアすることが必要だ。

声の塊があるように考えてもらえればいい。声の塊には、縦・横・高さが明確に存在する。縦の長さを声の明るさ、横の長さを声の響きとする。縦の長さを伸ばした時に、横の長さを縮ませると明るいが軽薄な声に聞こえる。

腹から声だせ※ただし、正しいルートを辿った声に限る

僕はよくツイッターを見るのだが、リツイートされて流れてきたラップバトル(呼び方が適切かは置いといてほしい笑)の動画を見た。R指定だったと思う。先行が挑戦者で、後攻がR指定。挑戦者は口が回り相手をディスる。ラップバトル面白いなぁ、とニヤニヤしながら聞いていた。

順番が回りR指定が相手を乏し始める。言葉数は挑戦者に比べ少なかったけれども、声の体積の差が見える深い声だったように思う。イヤホン越しだったので、生のライブで見るとさらに違いがはっきりと分かると予想されるが、勝敗の見える差があった。ただ声が大きいだけではなかった。あんまりこの表現を使いたくないが、腹から出す声というやつだ。

腹から声を出すという表現を聞き、形式的に真似をしようと考えると、腹の底から声が直線的に思えるかもしれない。しかし深い声とは、声の出元からちょうどよい速度で上半身を回り、外に放たれるものだと思ってもらいたい。

声を出すために重要なリングがいくつもあり、それを確実に一つ一つ通り抜ける。かつ、出すと思ったときに出ているような感覚だ。最初は考えながらクリアしていくもの。最終的にそれが自然、体に染み込んでいる状態で行われなければならない。「深い声で歌う」と心の中で思ったならッ!その時スデに声は外に出ているんだッ!

楽器作りと音楽教育を並行して行う

発声のレッスンと、曲の研究は別の科目だ。発声のレッスンとは楽器を作る人がヒノキを切り、曲げ、色を塗ってヴァイオリンを作る作業である。ボイストレーニングのコーチは、楽器の作り手である。

人間の体(筋肉・骨・皮)が素材の特殊な楽器だ。特徴は他の楽器に比べて、金はかからないが長い年月を要する。楽器の練習と、楽器の作成が平行して行われる。自分の判断の一つ一つが必要になってくる。

楽器の調律

先生は、海外の歌手は音楽教師とは別で、ボイストレーナーをつけると話す(先生は海外に出たわけではないが学生時代、外国人の牧師様にトレーニングしてもらったとのこと)。自分も激しく同意する。声楽とは、他の楽器と区別を付けなければならない。リコーダーには音程を分けれるように、穴の位置を計算されて、設計される。

計算して穴をあけるために音程感覚をトレーニングする。楽器の素材はタンパク質とかカルシウム。牧場の牛がA5の質になるようにある程度、考えた身体作りをしなければならない。発声レッスンを経なければ、ただの素材をコンコン鳴らしている作業に近い行為だと考える。

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